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弁護士報酬基準について

第1章 総則

第1条(弁護士報酬の種類)

1 弁護士報酬は,法律相談料,書面による鑑定料,着手金,報酬金,手数料,顧問料および日当とする。
2 前項の用語の意義は,次のとおりとする。
法律相談料 依頼者に対して行う法律相談
(口頭による鑑定のほか,電話・電子メール・ファックスその他書面による相談に対する簡易な回答を含む。)の対価をいう。
書面による鑑定料 依頼者に対して行う書面による法律上の判断又は意見の表明の対価をいう。
着手金 事件または法律事務(以下,「事件等」という)の性質上,委任事務処理の結果に成功・不成功があるものについて,その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価をいう。
報酬金 事件等の性質上,委任事務処理の結果に成功・不成功があるものについて,その成功の程度に応じて受ける委任事務処理の対価をいう。
手数料 原則として一回程度の手続または委任事務処理で終了する事件等についての委任事務処理の対価をいう。
顧問料 契約によって継続的に行う一定の法律事務の対価をいう。
日当 弁護士が,委任事務処理のために事務所所在地を離れ,移動によってその事件等のために時間を費やすこと(委任事務処理自体による拘束を除く)の対価をいう。

第2条(支払時期)

着手金は事件等の依頼を受けたときに,報酬金は事件等の処理が終了したときに,それぞれ支払いを受ける。


第3条(事件等の個数等)

1 弁護士報酬は,1件ごとに定めるものとし,裁判上の事件は審級ごとに,裁判外の事件等は当初依頼を受けた事務の範囲をもって,1件とする。
2 裁判外の事件等が裁判上の事件に移行したときは,別件とする。調停事件が審判事件に移行したとき,調停事件が訴訟事件に移行したときも,それぞれ別件とする。

第4条(消費税等)

消費税法にもとづき弁護士の役務に対して課せられる消費税等の額に相当する額は別途加算する。


第2章 法律相談料等

第5条(法律相談料)

法律相談料は,原則として,30分ごとに5000円とする。


第6条(書面による鑑定料)

書面による鑑定料は,原則として,10万円から30万円の範囲内の額とする。

第3章 着手金と報酬金

第7条(民事事件の着手金と報酬金の算定基準)

民事事件の着手金と報酬金については,原則として,着手金は事件等の対象の経済的利益の額を,報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額を,それぞれ基準として算定する。


第8条(経済的利益-算定可能な場合)

前条の経済的利益の額は,原則として,次のとおり算定する。

1 金銭債権は,債権総額(利息と遅延損害金を含む)。
2 将来の債権は,債権総額から中間利息を控除した額。
3 継続的給付債権は,債権総額の10分の7の額。
ただし,期間不定のものは,7年分の額。
4 賃料増減額請求事件は,増減額分の契約残存期間分の額。
ただし,期間の定めがない場合および残存期間が7年以下の場合は,増減額分の7年分の額。
5 所有権は,対象たる物の時価相当額。
6 占有権,地上権,永小作権,賃借権および使用借権は,対象たる物の時価の2分の1の額。
ただし,その権利の時価が対象たる物の時価の2分の1の額を超えるときは,その権利の時価相当額。
7 建物についての所有権に関する事件は,建物の時価相当額に,その敷地の時価の3分の1の額を加算した額。
建物についての占有権,賃借権および使用借権に関する事件は,前号の額に,その敷地の時価の3分の1の額を加算した額。
8 地役権は,承役地の時価の2分の1の額。
9 担保権は,被担保債権額。
ただし,担保物の時価が債権額に達しないときは,担保物の時価相当額。
10 不動産についての所有権,地上権,永小作権,地役権,賃借権および担保権等の登記手続請求事件は,第5号,第6号,第8号および前号に準じた額。
11 詐害行為取消請求事件は,取消請求債権額。
ただし,取消される法律行為の目的の価額が債権額に達しないときは,法律行為の目的の価額。
12 共有物分割請求事件は,対象となる持分の時価の3分の1の額。
ただし,分割の対象となる財産の範囲または持分に争いのある部分については,争いの対象となる財産または持分の額。
13 遺産分割請求事件は,対象となる相続分の時価相当額。
ただし,分割の対象となる財産の範囲および相続分につき争いのない部分については,その相続分の時価相当額の3分の1の額。
14 遺留分減殺請求事件は,対象となる遺留分の時価相当額。
15 金銭債権についての民事執行事件は,請求債権額。

第9条(経済的利益-算定不能な場合)

前条により経済的利益の額を算定することができないときは,原則として,その額を800万円とする。


第10条(着手金と報酬金の算定方法)

1 訴訟事件,非訟事件,家事審判事件,行政審判事件,労働審判事件,仲裁事件及び調停事件等の着手金と報酬金は,原則として,経済的利益の額を基準として,それぞれ次のとおり算定する。
ただし,着手金は10万円を最低額とする。
経済的利益の額 300万円以下の場合 300万円を超え、
3000万円以下の場合
3000万円を超え、
3億円以下の場合
3億円を超える場合
着手金 8% 5%
+90,000円
3%
+690,000円
2%
+3,690,000円
報酬金 16% 10%
+180,000円
6%
+1,380,000円
4%
+7,380,000円
2 示談交渉事件および裁判外の紛争解決手続事件の着手金と報酬金は,前項を準用する。

第11条(離婚事件)

離婚事件の着手金と報酬金は,原則として,30万円から50万円の範囲内の額とする。
ただし,財産分与,慰謝料,婚姻費用,養育費ほかの財産的給付を伴うときは,財産的給付の経済的利益の額を基準として, 依頼者と協議のうえ,第10条第1項の規定により算定された着手金および報酬金の額以下の適正妥当な額を加算する。


第12条(家事審判事件の特則)

家事事件手続法第39条の別表Ⅰに属する家事審判事件
(例えば,後見開始,保佐開始,補助開始,特別代理人の選任,子の氏の変更,熟慮期間の伸長,相続放棄,遺言書の検認,遺言執行者の選任, 遺留分の放棄など)で事案簡明なものについての弁護士報酬は,5万円以上20万円以下の手数料のみとすることができる。


第13条(境界に関する事件)

境界に関する訴訟事件の着手金と報酬金は,原則として,30万円から60万円の範囲内の額とする。
ただし,第10条第1項の規定により算定された着手金および報酬金の額がこれを上回るときは,同条項の規定によるものとする。


第14条(保全命令申立事件等)

1 仮差押および仮処分の各命令申立事件(以下,「保全命令申立事件」という)の着手金は,第10条第1項の規定により算定された額の2分の1とする。
ただし,審尋または口頭弁論を経たときは,同条項の規定により算定された額の3分の2とする。
2 前項の事件が重大または複雑であるときは,第10条第1項の規定により算定された額の4分の1の報酬金を受けることができるものとする。
ただし,審尋または口頭弁論を経たときは,同条項の規定により算定された額の3分の1の報酬金を受けることができるものとする。
3 第1項の手続のみにより本案の目的を達したときは,前項の規定にかかわらず,第10条第1項の規定に準じて報酬金を受けることができるものとする。
4 保全執行事件は,その執行が重大または複雑なときに限り,保全命令申立事件とは別に着手金および報酬金を受けることができるものとし, その額については,次条第1項および第2項の規定を準用する。
5 第1項の着手金および第2項の報酬金ならびに前項の着手金および報酬金は,本案事件と併せて受任したときでも, 本案事件の着手金および報酬金とは別に受けることとする。
6 保全命令申立事件および保全執行事件の着手金は,10万円を最低額とする。

第15条(民事執行事件等)

1 民事執行事件の着手金は,第10条第1項の規定により算定された額の2分の1とする。
2 民事執行事件の報酬金は,第10条第1項の規定により算定された額の4分の1とする。
3 民事執行事件の着手金および報酬金は,本案事件に引き続き受任したときでも,本案事件の着手金および報酬金とは別に受け取るものとする。
ただし,着手金は第10条第1項の規定により算定された額の3分の1とする。
4 執行停止事件の着手金は第10条第1項の規定により算定された額の2分の1とする。
ただし,本案事件に引き続き受任するときは,同条項の規定により算定された額の3分の1とする。
5 前項の事件が重大または複雑なときは,第10条第1項の規定により算定された額の4分の1の報酬金を受けることができるものとする。
6 民事執行事件および執行停止事件の着手金は,5万円を最低額とする。

第16条(倒産整理事件)

1 破産・民事再生・特別清算および会社更生の各事件の着手金は, 資本金・資産および負債の額ならびに,関係人の数等事件の規模に応じて定め,それぞれ次の額とする。
ただし,前記各事件に関する保全事件の弁護士報酬は次に述べる着手金に含まれるものとする。

(1) 事業者の自己破産事件  金50万円以上
(2) 非事業者の自己破産事件 金30万円以上
(3) 自己破産以外の破産事件 金50万円以上
(4) 事業者の民事再生事件  金100万円以上
(5) 非事業者の民事再生事件 金100万円以上
(6) 特別清算事件      金100万円以上
(7) 会社更生事件      金200万円以上

2 前項第4号及び第5号にかかわらず,小規模個人再生事件および給与所得者等再生事件の着手金は,30万円以上とする。
住宅資金特別条項の適用を求める場合は,着手金に10万円を加算することができる。
3 第1項の第4号ないし第7号の事件の報酬金は,第10条第1項の規定を準用する。
この場合の経済的利益の額は,配当額・配当資産・免除債権額・延払いによる利益および企業継続による利益等を考慮して算定する。
ただし,小規模個人再生事件および給与所得者等再生事件については,報酬金はない。

第17条(任意整理事件)

前条第1項に該当しない債務整理事件(以下,「任意整理事件」という)の着手金および報酬金は, 資本金・資産および負債の額ならびに関係人の数等事件の規模を考慮し,委任契約時に協議の上,定めるものとする。
ただし,個人の非事業者の任意整理事件の着手金は,債権者1社あたり3万円とする。


第18条(行政上の不服申立事件等)

1 行政上の異議申立・審査請求・再審査請求その他の不服申立ならびに行政手続事件の着手金は,第10条第1項の規定により算定された額の3分の2とし,報酬金は同条項の規定により算定された額の2分の1とする。
ただし,審尋または口頭審理等を経たときは,同条項の規定を準用する。
2 前項の着手金は,10万円を最低額とする。

第19条(刑事事件の着手金)

1 刑事事件の着手金は,次のとおりとする。
刑事事件の内容 着手金
1 起訴前 1 事案簡明な事件 金20万円以上,
金50万円以下
2 1以外の事件 金50万円以上
2 起訴後
(第1審)
1 裁判員裁判対象事件で事案簡明な事件 金50万円以上,
金100万円以下
2 1以外の裁判員裁判対象事件 金100万円以上
3 裁判員裁判対象外の事件で事案簡明な事件 金30万円以上,
金50万円以下
4 3以外の裁判員裁判対象外の事件 金50万円以上,
金100万円以下
3 上訴審
(控訴審および上告審をいう)
1 事案簡明な事件 金30万円以上,
金50万円以下
2 1以外の事件 金50万円以上
4 再審事件 金50万円以上
5 再審請求事件 金50万円以上
2 前項の事案簡明な事件とは,特段の事件の複雑さ,困難さ又は繁雑さが予想されず,委任事務処理に特段の労力又は時間を要しないと見込まれる事件であって,起訴前については事実関係に争いが無い情状事件,起訴後については公判開始から公判終結までの公判開延日数が2ないし3開廷程度と見込まれる事実関係に争いが無い情状事件(上告事件を除く)をいう。
上告審については,争点が比較的少ない簡明な事件をいう。

第20条(刑事事件の報酬金)

1 刑事事件の報酬金は次のとおりとする。
/ 刑事事件の内容 結 果 報酬金
1 起訴前 1 事案簡明な事件 1 不起訴 金30万円以上,
金50万円以下
2 求略式命令 1の額を超えない額
2 1以外の事件 1 不起訴 金50万円以上
2 求略式命令 金50万円以上
2 起訴後
(裁判員裁判対象事件)
1 事案簡明な事件 1 刑の執行猶予 金50万円以上,
金100万円以下
2 求刑された刑が軽減された場合 軽減の程度による相当な額
2 1以外の事件 1 無 罪 金200万円以上
2 刑の執行猶予 金100万円以上,
金200万円以下
3 求刑された刑が軽減された場合 軽減の程度による相当な額
3 上訴審(再審事件を含む) 1 無 罪 金100万円以上
2 刑の執行猶予 金50万円以上,
金100万円以下
3 求刑された刑が軽減された場合 軽減の程度による相当な額
4 検察官上訴が棄却された場合 金100万円以上
3 2以外の事件 1 事案簡明な事件 1 刑の執行猶予 金30万円以上,
金50万円以下
2 求刑された刑が軽減された場合 軽減の程度による相当な額
2 1以外の事件 1 無 罪 金100万円以上
2 刑の執行猶予 金50万円以上,
金100万円以下
3 求刑された刑が軽減された場合 軽減の程度による相当な額
3 上訴審(再審事件を含む) 1 無 罪 金100万円以上
2 刑の執行猶予 金50万円以上,
金100万円以下
3 求刑された刑が軽減された場合 軽減の程度による相当な額
4 検察官上訴が棄却された場合 金100万円以上
4 再審請求 再審開始の決定がされた場合 金100万円以上
2 前項の事案簡明な事件とは,前条の事案簡明な事件と見込まれ,かつ結果において予想された委任事務処理量で結論を得た事件をいう。
3 第1項の報酬金は,接見回数,公判出頭回数等を考慮して協議のうえ,同項の定める規準に従いその額を決めるものとする。

第21条(刑事事件につき,同一弁護士が引き続き受任した場合等)

1 起訴前に受任した事件が起訴(求略式命令を除く)され,引き続いて同一弁護士が起訴後の事件を受任するときは,第19条に定める着手金を受けることができる。
2 刑事事件につき,同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは,前2条の規定にかかわらず,着手金および報酬金を適正妥当な範囲内で減額することができる。
3 弁護士は,追加して受任する事件が同種であることにより,追加件数割合に比して1件あたりの委任事務処理量が軽減されるときは,追加受任する事件につき,着手金および報酬金を適正妥当な範囲内で減額することができる。

第22条(少年事件)

少年事件(少年を被疑者とする捜査中の事件を含む。以下,同じ。)の着手金および報酬金は,第19条ないし第21条を準用する。


第23条(告訴,告発等)

告訴・告発等の着手金,報酬金は,次のとおりとする。

/ 告訴・告発 検察審査の申立・仮釈放・仮出獄・恩赦等
着手金 金20万円以上 金10万円以上
報酬金 金20万円以上 金10万円以上
2 前項における告訴・告発の報酬とは告訴・告発が受理されたとき,検察審査の申立・仮釈放・仮出獄・恩赦等については各申立の目的が達せられたときに,それぞれ発生するものとする。

第4章 手数料その他

第24条(手数料)

手数料は,事件等の対象の経済的利益の額を基準として,原則として,次のとおりとする。

法律関係調査(事実関係調査を含む。) 金5万円から金20万円の範囲の額
内容証明郵便 金3万円から金5万円の範囲内の額
契約書作成 事案の困難性,重大性,特殊性,新規性,契約金額等,諸般の事情に応じて受任時に協議するものとする。
但し,最低金額は金10万円とする。
遺言書作成
定型 10万円から20万円の範囲内の額
非定型 300万円以下の部分 金20万円
300万円を超え3000万円以下の部分 1%
3000万円を超え3億円以下の部分 0.3%
3億円を超える部分 0.1%
遺言執行
300万円以下の部分 金30万円
300万円を超え3000万円以下の部分 2%
3000万円を超え3億円以下の部分 1%
3億円を超える部分 0.5%

第25条(任意後見と財産管理・身上監護)

任意後見または財産管理・身上監護の弁護士報酬は,原則として,次のとおりとする。

日常生活を営むのに必要な基本的な事務の処理を行うとき
月額5000円から5万円の範囲内の額
日常生活を営むのに必要な基本的な事務に加えて,収益不動産の管理その他の継続的な事務の処理を行うとき
月額3万円から10万円の範囲内の額
任意後見契約または財産管理・身上監護契約を締結した後,その効力が発生するまでの間,依頼者の事理弁識能力を確認するなどのために訪問して面談するときの手数料
1回あたり5000円から3万円の範囲内の額

第26条(時間制・タイムチャージ)

弁護士は,依頼者との協議により,受任する事件等に関し,第3章の規定によらないで,1時間あたりの適正妥当な委任事務処理単価にその処理に要した時間(移動に要する時間を含む)を乗じた額を,弁護士報酬として受けることができる。
前項の単価は1時間あたり2万円以上とする。弁護士報酬は,分単位で計算する。
弁護士は,具体的な単価の算定にあたり,事案の困難性・重大性・特殊性・新規性および弁護士の熟練度等を考慮し,前項の額を増減することができる。
弁護士は,時間制により弁護士報酬を受けるときは,予め依頼者から相当額を預かることができるものとする。
弁護士は,依頼者との協議により,第3章の規定によって,弁護士報酬を定めた事件等について,予め設定した処理期間を超えた場合は,その超えた期間において,当該事件等の処理に要した時間につき,第1項ないし第3項の規定を適用することができるものとする。

第27条(顧問料)

顧問料は,次のとおりとする。
事 業 者:月額 金5万円以上
非事業者:年額 金6万円(月額金5000円)以上
前項にかかわらず,弁護士は,依頼者と協議のうえ,前項の額を適正妥当な範囲内で増減額することができる
顧問契約に基づく弁護士業務の内容は,依頼者との協議により,個別に定める。
ただし,特に明記しない場合は,電話・ファックスおよび電子メール等による,一般的かつ簡易な法律相談業務とする。
時間制・タイムチャージの場合は,毎月の顧問料に含まれる所定時間を予め定めて,所定時間を超える業務については,別途時間制で弁護士報酬を請求できるものとする。
法律関係調査,契約書その他の書類の作成,書面鑑定,契約立合,従業員の法律相談,株主総会の指導または立ち合い,講演などの業務の内容および弁護士報酬,ならびに交通費および通信費などの実費の支払等については,弁護士は,依頼者と協議のうえ,顧問契約の中で,その対応方法を決定する。
ただし,上記の業務に関しては,あらかじめ顧問契約では定めを置かず別途,個別的に定めることもできる。

第28条(日当)

日当は,原則として,次のとおりとする。
半日(往復2時間を超え4時間まで)-------3万円から5万円
1日(往復4時間を超える場合)-------5万円から10万円


第29条(実費等の負担)

弁護士は,依頼者に対し,弁護士報酬とは別に,収入印紙代,郵便切手代,謄写料,交通通信費,宿泊料,保証金,保管金,供託金,その他の委任事務処理に要する実費等の負担を求めることができる。
弁護士は,概算により,あらかじめ依頼者から実費等を預かることができる。

第5章 中途終了の清算条項その他

第30条(委任契約中途終了)

委任契約にもとづく事件等の処理が,解任・辞任または委任事務の継続不能により中途で終了したときは,弁護士は依頼者と協議のうえ,委任事務処理の程度に応じて, 受領ずみの弁護士報酬の全部もしくは一部を返還し,または弁護士報酬の全部もしくは一部を請求することができる。
前項において,委任契約の終了につき,弁護士のみに重大な責任があるときは,弁護士は受領ずみの弁護士報酬の全部を返還しなければならない。
ただし,弁護士が既に委任事務の重要な部分の処理を終了しているときは,弁護士は依頼者と協議のうえ,その全部または一部を返還しないことができる。
第1項において,委任契約の終了につき,弁護士に責任がないにもかかわらず,依頼者が弁護士の同意なく委任事務を終了させたとき,依頼者が故意または重大な過失により委任事務処理を不能にしたとき,そのほか依頼者に重大な責任があるときには,弁護士は弁護士報酬の全部を請求することができる。
ただし,弁護士が委任事務の重要な部分の処理を終了していないときは,その全部については請求することができない。

第31条(事件等処理の中止等)

依頼者が着手金,手数料または委任事務処理に要する実費等の支払いを遅滞したときには,弁護士は事件等に着手せず,またはその処理を中止することができる。
前項の場合には,弁護士は,あらかじめ依頼者にその旨を通知しなければならない。
前項の通知は,依頼者が弁護士に届け出た住所に発すれば足りるものとする。

第32条(弁護士報酬の相殺等)

依頼者が弁護士報酬または立替実費等を支払わないときには,弁護士は依頼者に対する金銭債務と相殺し,または事件等に関して保管中の書類その他のものを依頼者に引き渡さないでおくことができる。
前項の場合には,弁護士は速やかに依頼者にその旨を通知しなければならない。
前項の通知は,依頼者が弁護士に届け出た住所に発すれば足りるものとする。

(施行)
この弁護士報酬基準は,2018年11月1日から施行する。